かけがえのないもの
「夢?」

「うん。私、お兄ちゃんと…」

そこまで言って、瑠奈は口をつぐんだ。

「…やっぱりなんでもない。恥ずかしいよ。」

「なんだよ…」

隼人は瑠奈の髪を撫でながら微笑んだ。

「もう、行かなきゃ…」

瑠奈の体は、もうほとんど宙に溶け込むように消えてしまっている。

「瑠奈…」

「明日、お父さんとお母さんの所に帰るから、お兄ちゃんも絶対来てね!」

「うん…すぐ、会いに行くよ…」

涙を懸命にこらえながら、隼人は瑠奈の顔を目に焼き付けた。
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