かけがえのないもの
時計の針は12時を回り、

日付が変わった。

隼人の目から、とめどなく涙が溢れる。

瑠奈を失った悲しみの涙なのか

瑠奈の思いに応えきれなかった悔しさの涙なのか


隼人には分からなかった。

ただ途方もない悲しみだけが心の中を支配していた。

それでも隼人は、瑠奈の温もりをその肌にしっかり刻み込んだ。

瑠奈の笑顔を、目に焼き付けた。

瑠奈の声を、確かに受け止めた。

そして、テーブルの上には、隼人の指には、

今日、このかけがえのない時間を、瑠奈と共に過ごしたという、

確かな証が残っていた。
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