大切なもの…〜cherry tree〜
崩れ落ちるように座ると、
ポケットから携帯が滑り落ちた。
真奈は履歴からケントの番号を出して、
発信ボタンを押した。
流れたアナウンスはいつもと違った。
「…現在使われておりません。番号を…」
電話を切り、埋めた穴を掘りおこした。
そして
電源を切り、電池を抜いて
合鍵と手紙と一緒に埋めた。
『真奈は…ケントに出会って幸せでした…』
立ち上がり
真奈は家に向かって歩き出した。
桜の木に隠れた影に気付かずに…。