大切なもの…〜cherry tree〜
『優子は?』
「ケントと留守番」
忘れたいのに、
ケントの名前を聞くと反応してしまう。
『ケン…ト…』
「あいつは今…」
『やめて!!』
ケントの話しなんか聞きたくない。
考えれば考える程会いたくなる。
くだらない事で笑い合って、
小さな事で喧嘩して。
海で言ってくれた事も、
桜並木で言ってくれた事も全て
あの日から思い出になっていく。
もう、二度と見れないあの人の笑顔。
『ケントの話は…せんといて…』
真奈が言うと
達也君は、洗濯物を干す為にベランダへ出た。
ー♪〜♪〜…
達也君の電話が鳴り、
開いたままの画面を見るとケントの名前。
真奈は通話ボタンを押し、
何も言わずに耳にあてた。