大切なもの…〜cherry tree〜
「真奈、俺は…」
ーガチャ
「…」
ケントが話出した瞬間、
真奈はリビングのドアを閉めた。
お互いの顔が見えなくなり、
ケントの声も止まる。
ドアの向こうで、
ケントがどんな顔をしているかわからない。
もう、ケントの話は聞きたくない。
真奈は、両手で耳を塞いで座り込んだ。
「真奈…ごめんな」
力強く耳を塞いでも、
ケントの声は耳に入ってくる。
聞きたくないのに、
何故か次の言葉を待っている。
真奈はドアから離れ、ソファに座った。
タバコに火をつけると、
リビングのドアが開いた。
煙りを吐き出し、
自分の視界からリビングに立つケントの姿を消す。