大切なもの…〜cherry tree〜
 


煙りはすぐに消え、目の前にはケントの姿。


ケントはなにも言わずに、
真奈と向かえ合わせに座った。


「ごめんな」


『なにが?』


申し訳なさそうに言う
ケントに真奈は冷めたように言った。



『帰って!』


「話だけ聞いて」


『何の話?女と遊んだ話?
それともわざわざ別れ話でもしにきたん?』


真奈が言うとケントは、
床に座り土下座をした。


『ちょっと…』


立ち上がる真奈に


「真奈!話だけ聞いたれ!」


と達也君が言った。


真奈は強く拳を握り、
唇が切れるくらい強く噛み締めた。


手の平に爪がくいこみ、
唇からは血が滲み出した。
< 245 / 405 >

この作品をシェア

pagetop