大切なもの…〜cherry tree〜
煙りはすぐに消え、目の前にはケントの姿。
ケントはなにも言わずに、
真奈と向かえ合わせに座った。
「ごめんな」
『なにが?』
申し訳なさそうに言う
ケントに真奈は冷めたように言った。
『帰って!』
「話だけ聞いて」
『何の話?女と遊んだ話?
それともわざわざ別れ話でもしにきたん?』
真奈が言うとケントは、
床に座り土下座をした。
『ちょっと…』
立ち上がる真奈に
「真奈!話だけ聞いたれ!」
と達也君が言った。
真奈は強く拳を握り、
唇が切れるくらい強く噛み締めた。
手の平に爪がくいこみ、
唇からは血が滲み出した。