大切なもの…〜cherry tree〜
笑顔でいれるように
達也君と剛君が帰り、
ケントと2人きりになった。
ケントの部屋になるはずの物置は、
閉めきられたカーテンだけの真っ暗な部屋。
ケントはある事に気付き、
真奈をじっと見ていた。
視線を感じた真奈は、
『なに?』
と聞くと
ケントは、黙ったまま真奈を見続ける。
『どないしたん?』
「指輪は?」
ケントの目線の先は、
真奈の左手にあった。
真奈は少し考え、小さな声で
『埋めた』
と言った。
今真奈の心の中は、
指輪を取りに行きたい。
でも、別れの手紙を
もう一度見ないといけない。
また、ケントと一緒に過ごす日が戻ってきたけど
あの短い手紙はもう見たくない。
時間が戻ったように悲しくなるから…。