大切なもの…〜cherry tree〜
ピアスを外し、小さな鍵をケントに渡した。
『日記の鍵。持っといて』
「俺が鍵持ったら真奈は日記書けんやん」
真奈は反対の耳をケントに見せて言った。
『鍵はもう一つある』
ピアスの先で揺れる小さな鍵。
ケントも同じように、ピアスに鍵を付けた。
「俺も日記書こっかなー」
『ケントには無理やろ』
真奈が笑って言うと、
ケントは部屋を出て行った。
クローゼットから新しい日記帳を出した。
表紙は真っ白で鍵は付いていない。
表紙を開き、1ページ目に
タイトルを書いた。
【ケントと共に】
これからは、この新しい日記に
ケントと共に生きていく証を記していく。
前のように悲しい出来事じゃなく、
1日を生きた証として。
楽しい事や喜びを書いて、
幸せ溢れる日記にしたい。
おじいさん
おはあさんになって、
この日記を読み返し
【こんな事もあったね】
と
笑顔になれるように。