大切なもの…〜cherry tree〜
 


達也君は真奈の肩に手を置き、


「剛はもっと責めてほしかったんちがう?」


と言った。


真奈は上を向いたまま、
返事をしない代わりに目を開いた。


「たぶん…真奈の明るい振る舞いと優しさが、逆に剛を苦しめたんかもしれん」


達也君の言った言葉で、
真奈は口に出して言った。


『真奈が…追い詰めた…。真奈が…殺した…。』


今日、浴室で言った言葉を。


ケントは涙を拭き、真奈を強く抱きしめた。


痛いくらい強く。
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