大切なもの…〜cherry tree〜
桜並木に着いて時計を見ると、
ケントに電話をしてから20分が経っていた。
何処を見渡しても、ケントの姿はまだ見えない。
道路が見える場所に腰を下ろして、
ドキドキしながらケントが来るのを待った。
また1つ、桜並木にいい思い出が増える。
「…真奈!」
微かに聞こえるケントの声。
立ち上がって前方の道路を見ると、
ケントが大きく手を振って道路の向こうで立っている。
車じゃない事がおかしいと思いながらも、
真奈も笑顔で大きく手を振った。
信号がない道路にケントが入った瞬間…
大きな音と共に、
ケントの姿が見えなくなった。