大切なもの…〜cherry tree〜
 


達也君は、
ケントの体を揺すりながら


「ケント!!寝とる暇なんかないやろ!!
お前は父親になるんやで!」


涙を流して言った。



真奈も、
ただ涙を流す事しか出来なかった。


達也君は涙を拭くと、
ケントの家族に連絡をする為に
部屋から出て行った。



手を握っても、
握り返さない冷たい手。


『ケント?
やっぱり真奈は幸せになれんのかな?




もう、ケントの声は聞けない。


『なんか言ってよ…』


何を言っても、
返事はかえってこないなんて
わかってる。


それでも、
真奈は話し続けた。
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