大切なもの…〜cherry tree〜
「ただいま」
『何しに帰ってきたん』
今日の天気にもっとも合う。
優子は目を見開いて、固まっている。
真奈はソファーにドカッと座り、
あいつの行動を目で追った。
「荷物取りに来ただけやから」
あいつ…
あいつとは、真奈の母親。
かなりの男好きで、
今も男の家に入り浸っている。
『なんか言う事あるやろ』
真奈は睨んで言い放つ。
「別になにもないけど」
この家の家賃も、
光熱費も食費も真奈が1人で払っている。
母親が滞納した分も。
母親の借金を知らなかった真奈は、
取立の人が来て初めて知った。
『あんたの借金真奈が払いよんねん!』
「親の借金、子供が払うの当たり前やろ」
この言葉を聞いて優子が立ち上がった。