大切なもの…〜cherry tree〜
『真奈な…小4の時に親が離婚して、母親と妹と一緒にあの家に残ってん』
ケントは黙って話を聞いているので、
真奈は話を続けた。
『それから1年。
母親は出かけると、
一週間帰ってこんかった。
帰って来た日は、
3日分くらいの食材を置いてまた家を出る。
それは、真奈が小学校卒業まで、約2年続いた。
でも、中学入学した日が最後。
母親は全く帰ってこんようになった。』
真奈は
またビールを一口飲んで、
『真奈は親に捨てられてん…』
消えそうな声で言うと、
ケントは真奈の手を強く握った。
『真奈は、1週間に1回しか帰ってこない母親を信じとった。
また、笑って一緒にすごせる日が来るのを信じて、
待ち続けた。
…でも、母親は真奈より男を選んだ。』