秘密のkiss
家に入ろうとすると、ベランダの芝生に立つ電灯に明りがついているのが見えた。
誰か、ベランダにいる?
私はそのまま、芝生を歩く。
「あっ。帰ってきたぞ」
見ると、柊がうちの犬のライ(サモエド)とじゃれていた。
「柊…」
「お帰り。遅かったな、」
ライを撫でながら、私を見る柊。
「買い物してて、」
私も、しゃがみライを撫でた。
「そっか。
さらが居なくて、寂しかった」
「えっ?」
と、私は柊を見る。
「そうライが言ってる…」
柊は、ライを優しく撫でながら、愛おしそうに見つめている。
ライのことね…。
「嘘。ライは柊のこと大好きだから、私のことなんて何とも思ってないよ」
「そんなことない」
なーと、彼はライの頬にキスをした。
なんか、妙にその光景にドキリとした。
「柊、おめでとう」
私はポツリと言った。
「へ?」
「今日の試合、」
「あぁ。ありがと」
と柊は微笑んで答えた。
「何だか…髪型が違うから、変な気分だ。」
柊は、ぎごちない声で話を切り出した。
「やっぱり変でしょ」
私は苦笑いしながら髪を触る。
「いや、似合ってる」
「えっ?」
柊とすぐ近くで目が合う。
何だろう…
この雰囲気。
胸が苦しい?
「じゃあ、俺そろそろ帰るよ」
と、柊は突然立ち上がる。
「え?夜食べていかないの?」
「あぁ。さら待ってただけだから」
「………。」
「おやすみ」
と柊は言うと、自分の家に帰っていった。
『そんな傍にいて、フツーあいつのこと意識するだろ?』
『え?』
『好きにならない?』