ミスティ ムーン=静かなる調べ=


 リヒトが熟考の末こういったとき、兄は心から胸をなで下ろした。

「あにき。俺にホストの極意を教えてくれ!」

 兄は比較的遠くの方のたばこ屋をさし、

「ライター買ってこい。百円のヤツ!」

 彼は走った。メロスのごとく。だから途中で気付いたのだ。

「なあんだ、中学のときと同じだ。人生バラ色と思えば何にも怖くない」

 太平楽な彼らしい。そのままどんどん駆けていって、息が切れたところで、


「お嬢さん、ボクに一番安いライターをください」




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