ミスティ ムーン=静かなる調べ=
「義母様。そのようなこと……すぐにレスキューが来て、どうにかしてくれますわ」


「あなた……ここはとにかく体温を保たねば、この子はまだ九歳よ」


 窓のスキマから暖かなストールが入ってきた。


 そのときボクはママの、叫びのような泣き声を耳にした。



 きっといろんなことが去来したのだろう。



 完全にパニックだ。



 これまでのことが、ママを打ちのめし、追い詰めてしまったのだ。



 あんな凍るような寒さと、仲の善くないパパのママと一緒になって、ボクを助けてくれようとしていた。



 そのことは感謝しても未だ足りない。


 
 だけどあんな告白を聞きたかったわけじゃあなかったんだ。


「ああ、あたくしは誰かのためにでなく自分のためだけに生きてきた。キャリア?!  そんなもの! 今この子を助けられずに何が! 」



(ママ、ボクは不幸じゃないよ。ママがいてくれる。それだけで、がんばれる気がするんだ)



「ママ、ママ、ボク大丈夫だよ。だから……」



(泣かないで――)



 そう言いたかったのに。



 涙があふれて、しゃっくりが止まらなかった。



< 51 / 74 >

この作品をシェア

pagetop