ミスティ ムーン=静かなる調べ=
すっげ、と言われリヒトは照れる。
自分に似合ってないのは百も承知、ひとが自分を通してきょうだいを観ていることに気がついたのはいつからだろう。
同じ進学組で、周りのクラスメイトがどことなく避けるように見えたのは?
そんな中、宮下のような変わらぬままの存在はありがたかった。
「まー、入れ」
どうやら通り雨だったらしい。
リヒトは、この上、宮下に、迷惑にも傘まで貸してくれなどと言わずに済んだようだ。
少なくともここに一時、避難していれば様子をみることができる……重苦しい曇天だ。
雨はまだ。でも西の空には雨雲が立ちこめており、今にも降り出しそうではあった。