ライフ オア デスティニー
福音の子
彼女の周囲には絶えず清らかな風があった。
守るように、慰めるように、あやすように、くすぐるように。
それは世界が耳を澄まし、息をもつかずに密やかに、秘めやかに待ちわびた瞬間だった。
二つの虹が地界まで差し込み、光に恐れを抱く者どもの住まう地獄まで届いたとき。
幾筋もある天に昇る滝の内、一つを選び運ばれてきた卵から生まれた。
彼女は生まれついて背に翼が二対あったため、異端とされた。
だが、それさえしのいで武芸の才を示したため、やがて天上の勇者と呼ばれることになる。
天界を支配する天帝は自らこれを名付け、世のひとびとは彼女をこうよんだ。
福音の子、エヴァンジェリン、と……
『勝者、エヴァンジェリン。優勝!』