ライフ オア デスティニー
エヴとエラルドがお互いを見つめた。
これが本当なら、地界どころか、天界まで滅びてしまう。
受け入れ先の無くなった地獄は死んだひとびとであふれかえってしまう。
世界のバランスが崩れてしまう。良い事などない。
それを回避できる者はただ一人。
この世に一人、勇者のみ。
エヴは呆然としてオーブをみた。
この子は赤子だ。まだ生まれてすらいない。言葉だって全然知らないはずだ。
エヴァンジェリンはこのとき、今まで育った土地を含めて、一度地界へ降りたら二度と天界へは戻らないと決意した。
「あたしがやるしかない。あたししか、いないんだ……だって神様、永いこと勇者名乗っておいて逃げるわけにいかないでしょう?」
痛みはなかった。ただ、懐かしい。無心に鍛錬を積み、苦痛とさえ仲良くなった日々も、もう過去の話。
「成し遂げるまで、故郷よあなたは故郷のままでいて。私はきっと、遠くで思い出すから、だから私がどこにいても、変わらずにいて」
彼女は地獄で手に入れた勇者のオーヴがメタリックに輝くのをじっと見つめた。