ライフ オア デスティニー
地界で、大陸に向けて発射されたミサイルが全て消失した。エヴァンジェリンは幾度血に倒れても信じていた。
人間の持つ根源的な力……愛というもの、そして誰もが持っているはずの良心とを。
傷つきながら、エヴァンジェリンは確信を深めていた。
戦争屋が銃器を売りつける、という単純なことをやってるだけで、一部の儲けをかっさらう者と、被害にあった子女などはわけが違う。
「あたしは負けない。必ず、かならずやこの争いを食い止めてみせる」
「だって、あたしは勇者だから! 勇者なんだから! ミサイルくらい、誘導爆発させるわ。負けない。この人間達のまずしさは、あたしが救ってみせる」
彼女は命がけの旅を続けた。
ぼろをまとい、慈愛と回復術をつかさどるというウリエル隊にならい、涙を隠す仮面をつけて。
彼女はなんども呪文のように唱えていた。
彼女の使命感と責務を果たすという、信条は充分に彼女を支えてくれた。
「使命を果たすまで、なにもしないではいられるもんですか! 頑張るんだ。いつかこの世の住民、一人残らず、笑って生きてゆけるように……」
ああ、誰が予想し得ただろう。一介の能天使がたった一人の力をもって、世界を変えようと奔走していたなどと。
どのような人間も。
だれも信じないだろう。だれも……
内戦地に取り残された教会の、子女らの前に四枚の羽を広げて立ちふさがり銃弾すら避けようともせず、その翼の光ではじき返した彼女の姿を。
そして彼女は生きた伝説となった。
その土地は天使の舞い降りた聖地として認められた。二度と銃弾の流れ弾ひとつ、飛んではこなくなった。