JEWEL BIRD【 side track line 】
episode 2 ミキ・フジバヤシ
女の子が泣いていた。
雨が降りしきる中、傘も持たずに泣いていた。
黒く長い髪は濡れ、その子が流す涙は雨と混ざり合う。
道行く人々は何も無いかの様に、傍らを(カタワラヲ)通り過ぎて行く。
俯き(ウツムキ)、目頭を両手で抑える彼女。
ビルに明かりが燈り(トモリ)始めた街中で、寒さが残る風と冷たい雨が、幼い女の子の体温を奪っていく。
そんな泣き続ける彼女に、片言の英語で話し掛ける男の子がいた。
「どう シタノ?」
そう声を掛けた男の子は、手に持っている黒い傘の下に、彼女を入れる。
「迷子ニ ナタ?」
彼女は言葉を返すでも無く、大声で泣きじゃくるのみであった。