才能に目覚めた少年
僕は学校を出てバスを待った。


家に帰る前に病院に行かないといけない。


どこも悪くはないが子供のころの事故以来、週に一度だけ通っていた。


料金は取られないので、時間があるとき、通えばいい。






バスが来た。


二百十円を払い、乗った。


午後三時だというのに、混んでいた。




僕は席が空いているのに座らない。




次の停留所で御爺さんが乗り込んできた。


僕が座ろうとしていた席に座った。


別に親切心があるわけでも優越感がほしいわけでもない。

面倒事に巻き込まれたくないだけだ。

外を眺めていると、時間が過ぎ目的地に到着した。






「森下総合病院前、御降りの際は、足物にご注意ください」

バス内でアナウンスが鳴った。

僕はボタンを押して降りる準備をした。





よく見るとバスに乗っている老人達も降りようとした。


僕は目の前にいる御爺さんを見た。


こちらを見ていた。


どうすればいいんだろう。



「すまんが、わしは足腰が悪いんだ。降りるのを手伝ってくださらんか」


御爺さんは僕に話しかけてきた。


「いいですよ」


僕は笑顔を作り降りるのを手伝った。



「すまんね」


御爺さんも笑顔を作った。

外から見れば、老人に優しい青年と見られるだろう。






僕としてはどうでもいいことだ。
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