才能に目覚めた少年
「将来の職がなくても、才能は才能だよ」




森下先生は僕を見つめた。

僕も先生を見つめた。

沈黙した時間だけが過ぎる。



「先生、そろそろ次の患者さんが待っています」



若い看護師が僕と森下先生の空間を割って入った。



「そうだね。また来週来てくれ」

「…はい」




僕は森下先生にお辞儀をしてその場を離れた。

ドアの前でもう一度先生を見て「ありがとうございました」と言い、部屋を出た。

先生はこちらを見ていた。






部屋を出たら、靴箱に行き病院を出た。


これで今日やるべきことは終わった。


僕は徒歩で帰宅した。






帰宅すると、僕は椅子に腰を下ろした。


いつも通りの日常、いつも通りの学校…。




僕は生きているのだろうか。



あのとき、才能に目覚めなければよかったのかもしれない。





そのまま僕は寝てしまった。


一人しかいない部屋の片隅で…。
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