才能に目覚めた少年
病院に着き、受付をして、三十分ほど待つと「神山ミコトさん」とドアの奥から自分を呼ぶ声が聞こえた。





僕はドアを開け、部屋に入る。


「やあ、元気だったかい」


今日も元気な先生がそこにいた。


「はい、先生こそ御元気で」


「まあまあ、緊張せずにリラックスして」


「リラックスしてます」


僕はいつも通りの会話をした。


「そうだね…よし。最近はどうだい。能力練習は順調かい」


「はい、おかげさまで」


「今日はどうしたんだ」


「先生、以前話してもらった『想定内の能力値を超える超越者』は存在するだろうっていう内容の書かれた本を貸してもらえませんか」


「どうしたんだい、急に…。
もしかして、超越者の練習を始めるのかい」


「いいえ、もう超越者になる気はありません。
ただ、気になって…」


「そうか。
いいよ。
ただしあれは論文だから他の論文と一緒になって本になっているから興味があったら、他のも読むといいよ」



「ありがとうございます」
先生はしばらく部屋を出て、五分ほどして出てきた。



「これがその本だよ」



分厚い本だった。




先生にページ数を聞いて開いてみたら、僕の知りたい部分は全部で十ページほどしかない。



いろんな研究結果が詰まった本だった。



「先生、いつ頃返せばいいですか」


「そうだね、気が向いたらでいいよ。
全部読んだから今は必要ないから」


「そうですか。ありがとうございます」


「それじゃあ、時計見せて」


「はい」





いつもどおり、腕時計の記録をして今日も終了した。








僕は病院を出て、寄り道をせずに家に帰ってすぐに論文を読んだ。
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