雨の鳴る夜
「お前、振るの早くね?つかまだ一ヶ月も経ってないだろ?」


「振ったんじゃなくて振られたんだよ。俺だって驚いた。」


ケータイへと落とす視線は俺のほうには全く向かず、孝輔は独り言のように話した。正直驚いた。今まで孝輔が付き合った女は、女から告白し、そして別れを告げるのは孝輔からだった。


しかし、今回だけは全く違った。孝輔から告白し、ゆりから別れを告げる。ただ孝輔の姿を見ると、これ以上深く聞くのは悪いと思い、話が途切れた。



外を見るとまだ雨は止む気配がない。道行く人たちは傘を強風で煽られながら、必死に歩いている。


「あ、俺降りるわ。」


孝輔が口を開いた。荷物を持って、やっと視線を向けてくれている。


「おう。また明日、だな。」
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