雨の鳴る夜
孝輔はケータイをしまって電車を降りていく。こっちを振り返ることなく降りていった。孝輔が降りてから、電車の中が静かになった。周りの人は、みんな何かをしている。


友達と話す女子高生。


ケータイを見つめている男子。


本を読む少女。


新聞を広げるオッサン。


寝ているばあさん。


人を観察していると時間がどんどん過ぎていく。俺にとっては電車に乗っている時間が、一日の中で一番退屈な時間だ。


なにをすることもない。一人ただ過ぎる時間を逆らわずにいるだけ。なんでか寂しくはない。もう慣れたからかもしれない。


辺りを見回しても俺以上に退屈な時間を過ごす人はいないんじゃないか、と思うくらいだ。
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