雨の鳴る夜
一人静かに座っていると、降りる駅に着いた。この駅で降りる人はかなりいて、人ごみをかき分けるのに汗をかくくらいだった。


うしろを見ると電車が大きな音をたてて発車していく。ぼさっと立って見えなくなるまでそこにいた。雨のせいか見えなくなるのは予想より早かった。


だけど降りたときよりは人が減った。さっさと帰ろう。そう思って歩き始めた。


「すいません!」


駅の階段を上ろうとしたとき、うしろから声がした。振り返ると俺より小さい女が、こっちを向いて手を降っている。


「俺……?」


自分に向けて小さく指をさすと、女は大きくうなずいて走ってきた。
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