傷跡
『泣くなって…。可哀相とか同情されるのが俺は一番嫌なんだ』
涙を流すあたしを見ながら、光輝は小さな声でそう言った。
『ち…がうもん…。同情なんかじゃない。ただ…光輝のこと…光輝のそんな過去とか気持ちに…二年も付き合ってたのに気付いてあげられなかった自分が悔しいの』
『みんな…口ではそう言うんだ。でも内心では可哀相とか他人事のようにしか思ってない。俺は中学一年から今まで誰にもこの話をしたことがなかった。何でか分かるか?』
光輝のそんな問い掛けにあたしは分からず首を横に振った。
『俺、施設にいたって言っただろ?親父が死んでから…また母親に田舎の富山で一緒に住もうって言われたんだ。でも俺は行かなかった。肩書も金もなくなった親父を捨てた母親が許せなかったから』