傷跡
『でも…中学になってすぐに友達になったやつがいたんだ。上野ってやつ。そいつと一緒に野球部に入ってめちゃくちゃ仲良くしててさ。本当にいいやつだって思ってたから…』
だけど、明るく話していた光輝の顔が、また少し曇っていくような気がした。
『だから俺は施設にいることとか…親父が自殺した話とか隠さずに初めて全部上野に話したんだ。そしたら目に涙浮かべて…話を聞いてくれてた。でもさ、次の日学校に行ったらそいつみんなに言いふらしてたんだ。悪気があったのかは分からないけど…なんか俺めちゃくちゃ悔しくてさ。別に施設が恥ずかしいとかは思ってなかったけど…親父のことを勝手に話されたことが悔しくて』
友達だと思って初めて心を開いた人が、
光輝の想いを汲み取りもせずに…
それを勝手に撒き散らした。
酷いよ…
光輝がどんな想いで話したのか…
全然分かってなかったんだよね。
『それから周りは同情の目。腫れ物に触るみたいな扱い。“可哀相”ってそんな目してさ。だからせっかく入った野球部も…それからやめて。俺には何もなくなってしまってたんだ』