傷跡
消えない記憶
『大丈夫……光輝には…あたしがいるじゃん』
そう言って、思わずあたしは光輝のことを抱きしめていた。
もう一人じゃないんだよ。
あたしがいるよ。
あたしは…
ずっと光輝のそばにいるから。
『俺…ずっと怖かったんだ。親父みたいになりたいのに…なるのが怖かった。自分の居場所が欲しかったけど…手に入れてももしなくなってしまったらどうしようって…怖くてさ』
『どういう意味?』
『ホストを本職として始めてからは毎日必死でさ。だんだん客がつくようになると役職ももらえるようなったし上の人に頼りにされるようにもなったじゃん。客も店も、俺を必要としてくれて。そしたらさ、なんか自分の居場所ができてくるような気がして嬉しかったんだ』
『うん…』
あたし静かにうなずきながら、あたしは光輝にそんな居場所すら感じさせることができなかったんだろうかと情けなくなっていった。
『でも…もし居場所がなくなってしまったらどうしようって…俺がなんか下手うったりしてさ。誰からも必要とされなくなった時のこと考えたら…なんか怖くなったんだ。俺がホストだから…ナンバーワンだからみんなが周りにいるけど…ナンバー落ちしたり何もなくなってしまったら親父の時の周りみたいに…お前とか仕事仲間とか同業者とか客とか、みんないなくなるんだろうなって』
あたし…までその“みんな”の中にふくまれてるの?
なんだかすごく悲しくなった。
光輝はあたしのことも…
信じてくれてなかったんだね。