傷跡



『もしもしー?』


『あのさぁ、ほんとのこと言ってね。あたしが今日勇二くんとご飯食べに行ってたこと…誰から聞いたの?』




さっきあたしに嘘をついた光輝に、あたしは優しくそう聞いた。




『だから勇二だって』





でも光輝は…

そんなあたしの優しい問い掛けに、また嘘をついたんだ。





『なんで嘘つくの?あたし勇二くんに確認したんだよ?本当のこと言いなよ』


『えー……。だってお前絶対言うもん。怖いし…絶対言えねーよ』


『あっそ。このまま黙ってるなら黙ってたらいいけどさ。じゃあ杏奈もこれから勝手にするし光輝に隠し事もするからね。文句言わないでよ』




なんかムキになって…

あたしは震えるような声で光輝にそう言っていた。



人に嘘をついたり、裏切るようなことをするのは…

光輝はキライなはずだよね?



なのに…何でなの?






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