傷跡


その日最後に行った場所で、光輝が突然言ったんだ。




『コレ下さい』




いきなり入った某ブランドのお店で、他のものには目もくれずに、光輝は店員さんにそう言った。




『ちょっ、コレって…』


『この前見に来た時にさ、絶対コレがいいなぁと思って』





光輝はそう言うと、あたしにとびっきりの笑顔を見せた。




あたしの瞳に映っていたのは、二つ並んだ指輪で。


いわゆるペアリングってやつだった。




『お前が不安にならないようにつけてて。ごめんな…最近あんまり時間作ってあげれなくて』




光輝はそう言うと、あたしの手を優しくそっと握ってくれた。




『こっ…こうきぃ…っ』




あたしは人目もはばからず、嬉しくて店の中で泣いてしまっていた。




『おいっ泣くなっつーの』



光輝は…そんなあたしを見て恥ずかしそうにそう言っていた。




光輝の彼女はあたし。



信じてたら大丈夫。



だって光輝は…

変わらずあたしを想ってくれてる。



あたしと同じ気持ちでいてくれてるんだもんね。




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