傷跡

欲望の渦



『おい、アン!ちょっと今日時間いい?大事な話があるんだ。出来れば光輝には内緒で』


『えっ?内緒で?』




あたしは少し悩んだけど、勇二くんは本当に大事そうな話っぽくて。

だから光輝には連絡しないでお店が終わると二人でいつもの居酒屋へ行ったんだ。




『ねぇ、大事な話ってなんなの?』




とにかく早く聞きたくて。

飲み物が来る前にすぐにそう聞いてしまった。




『あぁ…――。あのさ、アン…ルイの携帯の待ち受け見た?』


『待ち受け?知らない。ってゆーか…最近話すこともないのにルイの携帯なんか見ることないじゃん』


『だよな…』




勇二くんはフーッとためいきをつくと、運ばれてきたばかりのビールをぐいっと飲んだ。



『てゆーか…待ち受けって何?何かあったの?』


『あぁ…、うん。あのな、ルイの携帯の待ち受けが光輝の写メだったんだ。今日偶然チラッと見えてさ。もしかして…ルイと仲悪くなったきっかけって光輝のことが原因だったのか?』




勇二くんのそんな言葉を聞いたあたしは、ただ黙って俯いた。



頭がおかしくなりそう。


何で光輝の写メがルイの待ち受けになんてなってるの?


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