傷跡
『ナンバーワンを維持するために…ルイの気持ちを利用してるの?』
『利用っつーか…だって通ってくれるんだし断る必要ないっしょ。それに杏奈とは仲直りしたって聞いてたしさ』
ルイは…
あたしにあんなことをしてきていたのに。
光輝には関係が修復しているかのように装っていた。
『いくらお金を使ってくれるからって…あんなことがあったのに何で?何であたしに隠してたの?』
ルイは…
ルイだけは嫌なんだ。
どうしても…許せないよ…。
その時…
『ありがとうございましたー』
大きな声が次々と店内に響いていた。
奥のVIP席から出てきたのは…ルイとルイのお客さんで。
『杏奈待ってて。送り出してくるから』
そう言って光輝は、あたしを残して席を立った。
そんなあたしの座る客席の前を、ゆっくりとルイは通り過ぎて行く。
フッと、一瞬あたしを見て笑っているようにも見えた。
何も言えない状況だから。
なおさら腹が立ってくる。
そんなあたしの元に、翼が申し訳なさそうに近付くと、
『光輝さんもナンバー争いのため必死だったんです。許してあげてください…』
そう言って、あたしに頭を下げてきたんだ。
『なんで翼が謝るのよ…』
『すいません……。でも杏奈さんが心配するようなことは何もないと思います。光輝さんは売上のために仕方なく…ルイさんを切れなかったんだと思うんで…どうにもできなかった部分もあると思うんっすよ…。』