傷跡
すれ違う気持ち
『ごめんごめん。ルイちゃんもう帰っていったから。あ、翼もういいから3番行って』
光輝は戻ってくるなり翼を他の客席に行かせると、あたしの隣に何事もなかったかのように座った。
『あのさ…光輝は…』
『ごめん!俺が悪かったよ。でも杏奈もちょっとは分かるだろ?売り上げとか指名とか口座とか。やっぱり俺はナンバーワンでいたいし…お金を使ってくれる客は大事なんだ。だからプラスに考えたらいいじゃん。お前の嫌いなルイちゃんから俺が金を絞り取ってるってさ』
テキーラを飲んだせいか、だんだん酔いが回ってきていたあたしは、そんな光輝の言葉に…
頭がおかしくなりそうだった。
言ってくれると思ってたのに。
もう来させないようにするって。
もうちゃんとルイとは切るって。
あたしがこんなに…
ルイのことで嫌な思いをしてるのに…
それでも光輝は、ホストっていう自分の立場の売上を…
ナンバーワンを…取るんだ?