傷跡



『でもさ、俺も必死だったんだ。あいつも大事だったけど俺はNo.1を目指してて。で…トップに立って。でもトップに立つと落ちるのが嫌になってさ。色使って客をその気にさせて。ぶっちゃけ締日の前の日とか、客と寝たりもしてたんだ』




聞きたくないような…水商売の裏の世界の話。


お客さんと色恋沙汰になったり、売上のために枕営業をしたり。



全てはトップに立ち続けるために…

自分の本来のプライドを捨てて
、そんなちっぽけなプライドを守るように…お客さんと体を重ねていたんだ。





『でもさ、当然女の耳にも入ってて。だからキレられて。でも俺は…ナンバーワンになっておかしくなっちゃってたから…だから…文句言うならお前がもっと稼いで俺の売上に貢献しろよ!って……ありえねーこと口走っててさ』


『…………』




最低。



そう思ったのに。


何故かそう言えなかった。




なんだか…

光輝と陽翔が重なるように見えてしまったから。





『そしたらあいつさ、知らないうちに風俗で働いてて。俺の売上に貢献するんだとか言って…俺に金使うようになって。でも俺そんなこと知らなかったしナンバー争いで必死だったから自分のことしか見えてなかったんだ』





昔のその彼女は…

風俗で働いてまでお金を作って。


彼のために。
売上のために。


ただ好きだから…。

その気持ちだけで…嫌なことも全部我慢して…そんな日々を過ごしてたんだよね。




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