傷跡
そして――――
『杏奈!』
ビルを出てすぐに、光輝のそんな呼び声が聞こえてきて。
その声の先に視線を向けると、なんだか少し緊張してるような光輝の姿が瞳に映った。
『ごめん。急に呼び出して』
『うん……』
うるさい街の中に、静かな空気が流れていく。
『あのさ……一つだけ聞いていい?』
『うん…何?』
『杏奈さぁ…今勇二と付き合ってるってマジ?』
『えっ?』
一瞬あたしは、自分の耳を疑った。
あたしが…
勇二君と付き合ってる?