傷跡
『杏奈……』
朝日に染まる空。
そんな空を見上げていたあたしを、いきなり光輝はそう言いながら強く抱きしめてきた。
『ちょっと…光輝!?』
行き交う人達の目線。
すれ違う人達は、朝っぱらからこんな場所で…みたいな。
そんな表情を浮かべながら、あたし達の横を通り過ぎていく。
『ちょっと光輝!?ダメだって!お客さんに見られちゃうかもしれないよ?』
朝の歌舞伎町には、ホスト帰りの女の子もたくさん歩いているはずだし…
誰に見られてるか分からない。
ナンバーワンである光輝にとっては、致命傷を負うようなそんな行為は、決して許されるものではなかったんだ。
でも……―――
『もういいんだ。つーか……お前以外もう何もいらない。一番大切なものは何なのか。一番守らなきゃなんないのは何だったのか。それに…やっと気付いたからさ』