傷跡



そこにうずくまっていたのはルイで。



お互い目が合うと、なんだか気まずい空気が流れていった。





『ルイこんなところで何してるの?』


『杏奈こそ…っ、あっ!もしかして!光ちゃんの家にいたの?ねぇ!そうなの?だったら教えて!何号室に光ちゃんは住んでるの!?』




今にも泣きそうな顔で、ルイはあたしにそう聞いてきた。




住んでいるマンションは知っていても、どこに光輝が住んでいるのかをルイは…知らないんだ。





『……』




でもあたしは何も答えることができなかった。




『ねぇ!お願い!』



ルイのことは嫌いだった。


ルイがいたから…あたし達は離れることになったんだよ?




なのに……


こんな泣きそうな顔で…

ずっとここで光輝のことを待っていたのか…って思ったら。



ずっと感じていた憎しみが、一気に薄れていったんだ。



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