傷跡



『謝んないでよ……』


『だってあたし…育児放棄なんてひどい言い方しちゃって…』


『だからもういいってば』




ルイはつぶやくようにそう言うと、涙を流しながら悲しげに笑った。






『あたしにできることない?親権って取り戻せないの?』


『あんたバカじゃない?あっちにやったりこっちにやったり。子供はおもちゃじゃないんだよ?元旦那の親はすごいやり手の弁護士だし…無理に決まってんじゃん』


『でも…可能性はないわけじゃないんでしょ?』


『あのね、水商売やってる人間が親権請求して戻ってくると思てんの?ちゃんと安定した仕事じゃなきゃ無理に決まってるじゃん』


『だったら!ちゃんと昼間の仕事探して就職して安定すればいいでしょ?』


『今さらあたしが就職?無理に決まってんじゃん』


『………だね。そんな考えなら無理だよね。ルイは本気で親権取り戻す気がないからできないんだよ』





あたしがそう言うと、ルイは黙りこんでしまった。



キツイかもしれないけど。

でもそれが当たり前じゃないの?


本気で取り戻す気があるなら何だってできるはずでしょ?



風俗で働けるぐらい根性据わってるなら、就職活動ぐらい屁でもないじゃん。




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