傷跡



『分かってたの…っ……本当はずっと…光ちゃんが杏奈のことを思ってたこと……あたしはお金だけであたし自身を見てくれてなかったこと……でも…時々優しい言葉をかけてくれたから…だから…』


『分かったから。ルイ、もういいから…。だから泣かないでよ』


『本当は……ぅ…っ……風俗なんて…行きたくなか…た…知らな…人に触られるの…怖かった……っ……怖くて……嫌……ったの……』




ルイは泣き崩れながら必死でそう声を絞り出していた。



胸が苦しくて…きつくギュッと締め付けられていく。



ルイは…ずっと苦しかったんだ…。



辛かったんだよね。





『ルイ、ほら、立って』




あたしはうずくまっていたルイに、そう言ってそっと手を差し延べた。




『杏奈……っ……ごめ…ね……ほん……ごめん……っ…』




ルイは泣きながらあたしにそう言うと、差し延べていたあたしの手をとり、ゆっくりと立ち上がった。




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