傷跡



『あ!もうすぐ昔住んでた家が見えるぐらいかも』




都会から車を走らせてたどり着いたそのあたりは、緑が綺麗な静かな町だった。





『この町で光輝は生まれ育ったたんだね』


『うん、そうだなぁ』




そう答えた光輝は、なんだか懐かしそうに周りの景色を見つめていた。





『あ、ここ。ここが俺の昔の家だったんだ』


『えっ!?この家?』





すごい豪邸の前に、光輝はそう言ってゆっくりと車を停車させた。





『うん。ここが俺が昔住んでた家。なんかこうやって見たらやっぱすげーでけーよな』





敷地面積は軽くあたしの家の5倍ぐらいはありそうな超大きな家。


庭なんてすごく広くてプールらしきのも見える。




『ちょっと出てもいい?』



光輝はそう言うと、先に車からおりて、その家の前まで歩いていった。




あたしもそんな光輝を追うように、ゆっくりと家の前まで近付いていく。





『懐かしいなぁ…』



倉田という表札が飾られてある玄関を見つめながら、光輝はつぶやくようにそう言った。



今は全く知らない人が、この家の持ち主で。


光輝の幼い頃のお父さんとの思い出がいっぱい詰まった家には…



今は知らない誰かが住んでいるんだ。




< 308 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop