傷跡
『あ!もうすぐ昔住んでた家が見えるぐらいかも』
都会から車を走らせてたどり着いたそのあたりは、緑が綺麗な静かな町だった。
『この町で光輝は生まれ育ったたんだね』
『うん、そうだなぁ』
そう答えた光輝は、なんだか懐かしそうに周りの景色を見つめていた。
『あ、ここ。ここが俺の昔の家だったんだ』
『えっ!?この家?』
すごい豪邸の前に、光輝はそう言ってゆっくりと車を停車させた。
『うん。ここが俺が昔住んでた家。なんかこうやって見たらやっぱすげーでけーよな』
敷地面積は軽くあたしの家の5倍ぐらいはありそうな超大きな家。
庭なんてすごく広くてプールらしきのも見える。
『ちょっと出てもいい?』
光輝はそう言うと、先に車からおりて、その家の前まで歩いていった。
あたしもそんな光輝を追うように、ゆっくりと家の前まで近付いていく。
『懐かしいなぁ…』
倉田という表札が飾られてある玄関を見つめながら、光輝はつぶやくようにそう言った。
今は全く知らない人が、この家の持ち主で。
光輝の幼い頃のお父さんとの思い出がいっぱい詰まった家には…
今は知らない誰かが住んでいるんだ。