傷跡



『なんかさ、あんまり記憶はないんだけど。考えてみたらこんなに広い家で親子三人で住んでたなんておかしいよな。ムダに広いだけだし』




光輝はそう言って笑ってた。



でも…

やっぱりその笑顔はどこか少し悲しげで。



幸せな幼少期を過ごしたこの家に、懐かしい自分の姿を思い出しているように見えた。




あたしはそっと光輝の手を握る。



『光輝にはあたしがいる。これからもずっと一緒にいる。光輝は一人じゃないんだからね』



『おぅ…』




光輝の返事は、たった二言の短い返事だったけど。


でもそう言って、あたしが握っていた手を強く握り返してくれたんだ。


だから…

それだけで光輝の気持ちが全部伝わってきた気がしたの。



大切なことは分かりあえること。


何も言わなくても…

ちゃんと分かってあげれたらいいなって思った。
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