傷跡
『俺さぁ、将来ホスト引退したら自分で事業起こそうかと思ってるんだ』
『えっ?』
その時突然光輝の口から出た将来っていう言葉。
初めて聞く、光輝の未来への夢だった。
『一生ホストは無理だしさ。年齢的にも生活的にもいつかは落ち着かなきゃなんないし。だから飲食店でもいいし広告代理店とかさ、建築関係でも服飾関係でも。とりあえず何でもいいからいつかやりたいんだ』
『そっか…』
『だからさ、ずっと俺のそばにいてほしい。俺はいつか…こんなでっかい家をお前のために建ててやるから』
光輝はそう言うと、優しい顔でニッコリと微笑んでいた。
『光輝……っ』
何故か涙が溢れてくる。
でっかい家を建ててやるって言われたことや、光輝が自分で将来設計をたててたことが嬉しかったわけじゃない。
ただ単純に…
『ずっと俺のそばにいてほしい』
そう言ってくれたことが嬉しかったんだ。