傷跡



するとその時………



全く吹いてもいなかった風が、一瞬だけ強く吹いて…

あたしの髪の毛をフワッと靡かせた。



もしかして…

聞いていてくれてたのかな?



ありえないことだけど…

でもなんとなくそんな気がしたんだ。

お父さんが返事をしてくれたようなそんな気が。




『親父ー!元気かー?今日は彼女連れて来たんだ。俺、いつかは分かんねーけど絶対こいつと結婚する。だからその時はまた報告しに来るからさ。待ってろよ』



光輝はお墓を見ながらそう言って手を合わせていた。


その顔は…

なんだか本当にお父さんに話してるみたいに見えて。



すごく優しい穏やかな顔をしていた。




< 315 / 337 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop