傷跡
あれっ?
その時、何故か視線を感じたあたしは周りを見渡すと、少し離れた場所からもう一人そんな光輝の姿を見つめていた人を見つけた。
短い髪の…女の人だ。
『ねぇ光輝、あの人こっち見てるけど。知り合い?』
『ん?』
そう言って光輝がその先に視線を向けると、一瞬で光輝の顔つきが変わっていった。
『帰るぞ』
そして…
そう言ってスタスタと登ってきた階段の方向へと一人で先に歩いていく。
『ちょっと待ってよ光輝!誰なの?』
光輝を追いかけながらあたしがそう聞くと、光輝は急に立ち止まってあたしに背中を向けたまま言ったんだ。
『あれ、俺の母親…』