傷跡
光輝が以前いなくなった時。
お母さんに会うために富山に行っていたことは知っていた。
そして、十何年ぶりかに会ったことも。
でも、光輝はお母さんにはもう二度と会わないと言ってた。
やっぱり過去のことが許せなかったと…。
『ちょっと待ってて』
あたしは光輝にそう言うと、お墓まで急いで戻った。
見えてくる墓場。
光輝のお母さんだというその髪の短い女の人は、戻ってきたあたしに気付かないまま目をつむって光輝のお父さんのお墓の前でジッと手を合わせていた。
『あっ!あの…』
どうしていいのか、何がしたいのか自分でもよく分からなかったけど。
気付いたらそう声をかけてしまっていた。