傷跡


『何で?何も言われない方がラクじゃないんですか?』



あたしは不思議に思ったんだ。


口うるさいより何も言われない方が絶対ラクなはずなのに…って。




『最初はそう思ったよ。でも途中からさ、言いたい言葉ガマンしてくれてるんだろうなぁって。だんだん考え方が変わってきたんだ。だからこいつは絶対何があっても守っていこうって。それにさ、何も言われなくなったら逆にこっちが不安になっていったんだ』



『そうなんだ…』



『でも結局は俺のことをちゃんと信じてくれたってことだと思う。お互いの間に信用がなくなったら終わったも同然だからさ』





信用…?



あたしは…

光輝を信じられてる?



心の中で自分自身に問い掛けた。



ただただ自分の不安さばかりを光輝に押し付けて…

想いをぶつけてただけだ…。





『まぁ杏奈ちゃんも光輝もまだ若いしゆっくり信頼関係を築きあげていけばいいよ。焦ってたらうまくいくものもいかないようになるから。何かあった時はとりあえず落ち着いて考えてみな。喧嘩をするよりも絶対もっと違う答えが見つかるはずだから』




アースさんの話すことは、なんだか奥が深い。


そして必ず当たってる気がした。



あたしはアースさんに言われた言葉をちゃんと胸にしまったんだ。



ゆっくり築いていけばいいんだよね。


焦らなくていいんだよね。



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