傷跡



光輝のお母さんがしたことは、決して許されることではないけど。



でも…

過去を振り返るたびに、きっとこの人の心は変わっていったんだ。



後悔してるから…

何か伝えたいことや思ったことがあったから…

ここに来たんだよね。





『杏奈!』



その時……


後ろから光輝の声がして。

大きな声であたしに言ったんだ。



『喋んじゃねーよこんなやつと!』




光輝……。




『このまま一生…光輝はずっとお母さんのこと憎んでいくつもり?裏切られた人を許すことは簡単じゃないよ。でも人を憎んで生きていくのって…ずっとしんどいじゃん。光輝の中に残ってる傷跡を消さない限り、ずっと自分の過去に背を向けることになるんだよ?』





あたしがそう言うと、光輝はしばらく黙ったあと静かにお母さんに向けて話し始めた。


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