傷跡



『何しにきたんだよ?わざわざこんなとこまで』


『…ごめんね……三年前から毎月来てたの……もう今すぐ帰るから…ごめんなさい』




お母さんは小さな声でそう言うと、悲しげな顔であたし達の横を通り過ぎていった。




『あーーっ!もー!腹立つんだよ!何なんだよ!何がしたんだよ!』




光輝はそんなお母さんの背中を見つめながら、そんな怒鳴り声をぶつけていた。





『ごめ…なさい……ただ…謝りたくて…。お父さんを一人にしてしまったこと…後悔してる。許してもらえるわけないけど…一人で苦しんで死んでいったこと思うと…辛く…』




背中を向けながらそう言ったお母さんの声は、最後まで聞き取れなかった。

涙で声が枯れてしまってたいたからだ。




『俺だって辛いよ。もうちょっと大きかったら助けてやれたかもしれないのに……つーか後悔するなら初めっからあんなことすんじゃねーよ!親父の気持ち…もっと考えてほしかった』


『ごめんなさい…』


『でももう…過ぎたことは何言っても戻んねーから。だから償いの気持ちがあるんならさ、これからもここに来てあげてくれよ…きっと親父も…許してくれると思うから』


『光輝…ごめ…なさ………ありが…う………』



声を震わせながら、お母さんは泣いていた。






ねぇ光輝…?


偉かったね。


初めて自分自身で過去の殻を破った。



心の奥底にあった傷跡も…


こうしてお母さんを許すことで、きっとこれから癒えていくと思う。



きっと……


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